CBDの臨床試験 体内動態と安全性

<はじめに>

カンナビジオール(CBD)は、小児期発症の薬剤抵抗性てんかんの治療薬として、日本での導入が検討されています。ペット用としては、専ら医療品としててんかんの治療に使用されています。

子供に安心して使えるのかどうかの研究が行われています。

日本臨床薬理学会学術総会抄録集に、CBDのが、どのように吸収され、分布し、代謝され、排泄されるか(体内動態)や、安全性および忍容性を調べたものがありますので、ご紹介します。

大麻由来カンナビジオール(CBD)の薬物動態、安全性および忍容性に関する検討

  

<目次>

1.研究の目的

2.研究の方法

3.研究の結果

4.結論

<まとめ>


1. 研究の目的  

CBD(カンナビジオール)は、てんかん治療などの医療用途で注目されている大麻由来の成分です。しかし、日本ではCBDの安全性や体内での作用(薬物動態)についてのデータが少なく、特に「乱用のリスク」や「日本人に対する影響」が十分に研究されていませんでした。

そこで、この研究では、次の3つのポイントを明らかにすることを目的としました。

・CBDは依存性があるのか?
CBDを摂取したときに「気持ちよくなる(多幸感)」作用があるかどうかを検証し、乱用のリスクがあるかどうかを評価する。

・CBDの体内での動き(薬物動態)はどうなるのか?
日本人と白人の間で、CBDの吸収・分解・排出の仕方に違いがあるかを調べる。

・CBDは遺伝的な違いによって影響を受けるのか?
CBDを分解する酵素(CYP2C19)に遺伝的な違いがある人でも、CBDの安全性や体への影響が変わらないかを調べる。

この研究では、CBDの乱用および依存のリスクを評価する非臨床および臨床試験を概説するとともに、日本人を対象とした臨床薬理試験を報告しています。


2. 研究の方法 

非臨床試験および臨床試験のデータ検討

・非臨床試験: 未発表のGW社※1のデータを使用。 

・臨床試験: 健康成人を対象とし、以下の評価を実施。

  乱用リスク: 薬物嗜好視覚的アナログ尺度(DL-VAS)を使用。

  離脱症状: Cannabis Withdrawal Scale(CWS)および20項目のPenn Physician
       Withdrawal Checklist(PWC-20)を用いて評価。

※1 GW社(GW Pharmaceuticals)は、カンナビノイド医薬品の研究・開発を行うイギリスのバイオ製薬企業。1998年に設立され、大麻由来の医薬品を開発・製造する先駆的な企業。

臨床薬理試験

・対象者: 日本国外での日本人および白人、さらにCBDの代謝酵素であるCYP2C19の表現型が異なる日本人。

・投与方法: 単回および反復投与。

・評価項目: 薬物動態、安全性および忍容性。


3. 研究の結果

非臨床試験

CBDは、テトラヒドロカンナビノール(THC)様の多幸感を引き起こす可能性が低いことが示唆されました。

臨床試験

・CBD 750 mg(治療用量)のDL-VASにおける最大効果はプラセボと比較して有意差が認められませんでした(p=0.51)。

・陽性対照として用いたアルプラゾラム2 mgおよびドロナビノール10 mgは、プラセボに対し有意差が認められました(p≦0.0001)。

臨床薬理試験

・単回および反復投与ともに、最高血中濃度や薬物血中濃度時間曲線下面積において、日本人と白人の間で差が認められませんでした。

・代謝能力の異なる日本人間においても、大きな差異は認められませんでした。

・いずれの臨床試験でも、重篤な有害事象は認められませんでした。


4. 結論

・CBDの非臨床および臨床試験では、多幸感を引き起こす作用は認められず、先行研究とも矛盾しない結果となりました。

・乱用のリスクを評価した臨床試験においても、CBDによる乱用のリスクは陽性対照と比較して極めて低いことが示されました。

・また、日本人と白人、あるいはCYP2C19遺伝子多型においても、CBDの薬物動態、安全性および忍容性が同等であることが確認されました。

(本演題は第55回日本てんかん学会にて発表した2演題の内容を統合したものです)

 

<まとめ>

ちょっと分かりづらいので、分かりやすい言葉でまとめます。

この研究では、CBDが「ハイ(多幸感)」を引き起こさないことが確認されました。
また、CBDには乱用や依存のリスクがほとんどないことが、臨床試験によって証明されました。

さらに、日本人と白人の間で、CBDの効果や体内での処理のされ方に違いはないことが分かりました。

また、CBDを代謝する酵素(CYP2C19)の遺伝的な違いがあっても、安全性や体への影響に大きな差は見られませんでした

この研究の結果、CBDには乱用リスクがなく、安全性も高いことが示され、日本人でも白人と同じようにCBDを安全に使用できる可能性が確認されました。


  

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